2018年11月から今年1月まで募集しておりました障がいや疾患、その他様々な原因で「生きづらさ」を感じている方々、その家族や友人、関係者による「ココロの詩」は多数の応募をいただきました。作詞家や作曲家らによる厳正な審査をした結果、大阪市の程島正幸さん作「なりたい」が最優秀作品に選定されました。以下優秀作品とともに発表いたします。
最優秀作品 「なりたい」 程島正幸(大阪市)
優秀作品 「ありがとうという薬」 静沢生(埼玉県)
「挫折」 吐苦迷(東京都)
「ヒマワリ」 吐苦迷(東京都)
「葛藤」 名無し(東京都)
「生きる」 のんたん(東京都)
引地達也・ケアステージHUG実行委員会委員長の選評
第一回目となりました「ココロの詩」は予想を超える約200点の作品が寄せられました。精神疾患や各種障がいにより社会的支援が必要な方、生きづらさを感じている方、その方々の支援に携わる方々や家族や関係者の「ココロ」が表現された作品はすべて切実な思いを表現した力作ばかりで、審査を務めた作詞家や音楽関係者、編集者らを悩ませました。同時に、それぞれの世界観は作詞や歌の新たな可能性を引き出してくれそうで、今後も「ココロの詩」の募集は続けるべきだとの結論にも達しました。応募いただいた方みなさまに心より感謝申し上げます。
最優秀作品の「なりたい」は、スケールの大きい世界観の中で繊細な気持ちを表現した作品でした。どんな方にも口ずさんでいただける素敵なフレーズが織りなされていて、ポップスにも合唱にも対応できる言葉の数々にどんな曲になっていくのか、期待が膨らみます。
優秀作品の「ありがとうという薬」には苦しみと喜びを人間のサイズで描きながら「ありがとう」の言葉の深さを教えてくれます。「挫折」は疾患者特有の感覚の展開が秀逸で、「ヒマワリ」は過去を断ち切れない思いをヒマワリという希望に託す切実さが心に響いてきます。「葛藤」は「いい子でいたがるのはなぜ?」との問いかけが現代の普遍的なメッセージとして突き刺さってきました。「生きる」は、当たり前の「生」を疾患当事者の言葉だからこそ、感じる生きることの自覚が新鮮な感覚で綴られていました。
ここに挙げられなかった作品の中にも、紹介したい力作はまだまだあります。それらは技術で練り上げられたものではなく、自分のココロに向き合った方々の作品のような気がしています。それらの作品の数々が多くの人の目に触れてほしいと心から願うと同時に、私自身もその場が出来ないか、考えていきたいと思います。
優秀作品「なりたい」 程島正幸
花になりたいのです
生まれ変わったら こんどは
花になりたいのです
名前も知らない 野の花に
踏まれてもなお生きる 野の花に
鳥になりたいのです
生まれ変わったら こんどは
鳥になりたいのです
島を巡る 渡り鳥に
自由に羽ばたく 海鳥に
風になりたいのです
生まれ変わったら こんどは
風になりたいのです
綿毛を飛ばす 秋風に
潮の香(か)運ぶ 海風に
雲になりたいのです
生まれ変わったら こんどは
雲になりたいのです
同じ形のない あの雲に
風たなびく あの雲に
みんなと同じになりたいけれど
普通に生きたいだけなのだけど
生まれ変わったら 今度も
私は 私になりたいのです
失敗ばかりの人生だけど
無駄ばっかりの人生だけど
生まれ変わったら こんども
あなたの子供で 在りたいのです
最優秀作品「なりたい」作者、程島正幸さんのコメント
私は双極性障害の冬季うつ病ですが、この作品は冬の時期の状態の悪い時に書きました。子供のころにいじめにあって友達がおらず、休み時間のたびに学校の図書館で本を読んで過ごしていたのが詩を作るのに役立っているかもしれません。頑固な母親との不和で家を飛び出し、炊き出しのごはんでしのぎながら、公園で暮らした時期もありましたが、今は自立支援センターでの共同生活を経て、一人暮らしをしています。就労継続支援B型施設でパンを作っています。まだ母親とは和解はしていません。まだ自分に自信がないからですが、今度生まれ変わって同じような状況になったら、もっとうまくやれると思うんです。それを詩に書きました。
(インタビューの詳細はケアメディア2019年秋号に掲載いたします)
最優秀作品は歌曲としてCDリリースの予定です。ケアメディア次号で最優秀作品の作者へのインタビュー等を掲載予定です。
“ケアステージHUG”「ココロの詩」は本年末から来年にかけて第二回の募集を行う予定です。募集要項は「季刊ケアメディア」及び「歌の手帖社」ほか、掲載している公募関連の書籍やインターネットの情報をご覧ください。
主催 ケアステージHUG実行委員会
共催 一般財団法人福祉教育支援協会/ケアメディア推進プロジェクト/エイフォースエンタテイメント/歌の手帖社
後援 LPエデュケーション